猟奇的な殺人現場にタロットカードが残されている・・・と言われれば、読まずにはいられない。
ただ、ちょっとSFというか、近未来設定だったので、苦手な感じで読むのに時間がかかってしまった。
装丁のウェイト版をもとにしたタロットカードがキレイ。
このカードが売られていれば、買うのに。
出てきたカードは「運命の輪」「吊られた男」「愚者」「世界」「恋人」「正義」「魔術師」の7枚。
占いとしてのカードの意味だけではなく、ユング心理学的解釈もあって面白かった。
すごい知識とリアリティだな、と思ったら、そもそも作家さんが精神科医だった。なるほど。
「テリブル・マザーの元型のことは知ってる?」
小笠原慧「タロットの迷宮」
母親の無意識にひそむ所有欲は、わが子を手元から離そうとせず、母親から離れていこうとするわが子を、裏切り者として食い殺してしまう、恐ろしい一面をもった存在でもある。それを、スイスの精神分析学者、C・G・ユングはテリブル・マザーと呼んだ。
「きみもなかなか勘が鋭くなったな。まあ当たらずとも遠からずだ。私は当時、人間の運命というものに、強い関心を抱いていた。人間は宿命というものから逃れられないのか、運命は変えられないのか。有力な手がかりを与えてくれるように思えたのが、ソンディの運命分析という手法であり、もう一つがユングの分析心理学だった」
小笠原慧「タロットの迷宮」
(中略)
「ユングは、無意識と意識の間のコミュニケーションというものを、とても重要視した。彼によると、精神の病というものは、その両者のコミュニケーションが妨げられ、それによって意識が狭められた結果、引き起こされるとされる。自分が存在し、生きる意味とは、より普遍的な無意識との交流によって与えられるものだ、と考えたのだ」
「無意識との対話という考え方は、占いというものに重要な根拠を与えるわね」
小笠原慧「タロットの迷宮」
「そのとおり。占いは単なる絵空事ではなく、集合的無意識が我々に伝えてくれるメッセージということになる。タロットも、そうした可能性をもったものとして、ユングが目をつけたものの一つだったわけだ」
タロットの迷宮「すべて演技ということになるかな?並のサイコパスは、悪を演じようとする。だが、狡猾なサイコパスは、善を演じる」
小笠原慧「タロットの迷宮」
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